太平洋の平和、期待される日本の役割


 フィリピンのドゥテルテ大統領の言動が問題となっている。東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議のためラオスに出発する際、地元ダバオでの記者会見に臨んだドゥテルテ氏に、首脳会談の席で麻薬取締りのため1000人以上を不法に殺害したことをオバマ大統領から問われるのではとの質問に対し、「彼のことは気にしない。誰だ、それは。売春婦の息子め、ののしってやる!」と言い放ったのだ。

 

 翌日、「大きく物議を醸した発言を後悔している」と声明を発表したが、ことすでに遅し。米国政府が、予定されていた米比首脳会談中止を決定した後だったからである。

 

 その後ドゥテルテ大統領は訪中し、習近平主席から240億ドル(約2兆5千億円)の援助をひきだしたが、北京市内での経済フォーラムでの演説でもさんざん米国の悪口を言っている。その中で、「アメリカとの関係を離脱する。軍事的にも経済的にも離脱する」とまで述べ、南シナ海での領有権問題でも中国との2国間協議に応じることを約束した。

 

 その後、フィリピン外務省は釈明したが、米国はラッセル国務次官補をフィリピンに派遣し、対中接近に厳しくクギを刺したのである。

 

 中国は来年秋、5年に1度の党大会を控える。習主席はそこで党規約を改変し3期15年まで主席続投を目指していると伝えられている。7名の中央政治局員の座をめぐっても習近平主席派と李克強首相派の激しい権力闘争が行われており、10月24日からはその前哨戦となる第18期中央委員会第6回総会が開かれている。

 

 習近平主席のフィリピンへの大判振る舞いは、その直前になされたもので内部向けのパフォーマンス的色彩がないわけではない。しかし中国国内では、国内経済が青息吐息の状態で、どうしてこのような多額の海外支援をやるのかとネット上で厳しい批判がなされた。

 

 中国の狙いは明らかだ。南シナ海から東シナ海を制し太平洋に進出、米国包囲網を築くと共に、最終的には米国にとって代わっての世界覇権を握ることであり、そのための海洋戦略の一環としての南シナ海の軍事的制覇なのである。

 

 これを具現化するためには、太平洋への出口となる島国を押さえなければならない。しかし台湾は蔡英文氏の当選により道は遠のいた。残るはフィリピン、そして尖閣列島からつながる日本の西南諸島、沖縄である。

 

 指導者がなすべき第1のことは、ことの大小、優劣の順序を決めることであろう。大国の指導者が「木を見て森を見ず」に陥ったら世界が混乱する。米国は、フィリピンの過激な麻薬取締りに対する批判より、フィリピンを対中包囲網の中に引き留めて置くことを優先すべきではなかろうか。米国が難しければ日本がやるしかない。太平洋を平和な海とするために、島嶼国をまとめる役割は、同じ島嶼国である日本のほうが果たせる可能性を備えているといえよう。安倍総理はその器を備えた方である。

 

国際勝共連合会長 太田洪量

(「世界思想」2016年12月号より)