日露交渉の難しさと日米安保条約


 山口県長門市と東京での日露首脳会談の日(12月15日から)が近くなりました。安倍首相とプーチン大統領の会談も、先月のAPEC首脳会議(ペルーのリマ)に伴うもので、15回目になりました。しかし最近は、結果について「悲観的」な予測が多くなってきています。

 

 9月2日午後、ロシア極東ウラジオストクを訪れプーチン大統領と会談しましたが、その直後の記者会見で安倍首相は、「道筋が見えてきた」「その手ごたえを強く感じることができた会談だった」と述べました。

 

 しかし、リマでの会談後の安倍氏のコメントは「(平和条約は)70年間できなかったわけで、そう簡単な課題ではない。この平和条約の解決に向けて筋道は見えてくる、見えてきてはいるのだが、一歩一歩、山を越えていく必要があります」というものでした。確かにトーンダウンの印象は受けますが、語った内容は変わりません。

 

 プーチン氏の発言内容も、実は変わっていません。「領土を取引するつもりはない」(9月2日)し、「平和条約の交渉に期限を設けるのは不可能であり、有害だ」(10月27日)というものです。

 

 プーチン氏が言う「引き分け」が、どのようなものを想定しているのか分かりませんが、領土問題を「前進」させるためには、プーチン氏は国内保守派(シロビキと言われている)を説得しなければなりません。治安・国号関係省庁の職員とその出身者です。

 

 11月15日、日露経済協力を担当してきたウリュカエフ経済発展相が賄賂疑惑で逮捕。さらには、北方領土の国後島と択捉島で、ロシア軍が最新鋭のミサイルシステムを配備したと、11月22日にインタファクス通信が伝えました。シロビキの反発が背後にあると見なければならないでしょう。

 

 評論家の佐藤優氏は、両国の交渉において最も困難を極めるのは、日米安保条約の第5条前段、<各締約国は、日本国の姿勢の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものとであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する>にある、と指摘しています。

 

 この文言は、簡単に言えば、日本の施政が及ぶすべての領域で米軍が活動することができるようになる、ということ。北方領土で米軍活動するようになることを簡単に容認できるはずがないというわけです。

 

 米国の次期大統領は、プーチン氏を評価するトランプ氏です。しかし次期国防長官に任命されたジェームズ・マチス氏は、66年ぶりといわれる軍出身者であり対露強硬派として知られている人物です。シロビキの警戒は必至です。日露交渉は、焦らずにじっくりとの姿勢で見守りましょう。