TPPの基本的な内容


 環太平洋戦略的経済連携協定TPP)の採決がずれ込んでいます。TPPを担当する山本有二農水相が失言を繰り返し[1]、野党側が反発しているためです。TPP締結は日本、あるいは世界の平和と繁栄にとって極めて重要です。山本大臣には猛省を、野党各党には建設的な議論を望みます。

 

[1] 10月18日の自民党議員のパーティで「強行採決するかどうかは佐藤さんが決める」と発言し、批判を受けた。翌日発言を撤回して謝罪したが、11月1日のパーティで「こないだ冗談を言ったら、(農相を)首になりそうになった」と語り、野党が不信任決議案を出そうとしている。

 

 では、そもそもTPPとは何でしょうか? 今回はその基本的な内容を説明します。

 

 話は第二次大戦前までさかのぼります。当時の世界は空前の大恐慌に陥っていました。この時、英仏などの帝国主義国は、ブロック経済によって危機を乗り越えようとしました。

 

 ブロック経済とは、植民地を取り込んでブロックを作り、他国には高い関税をかけて締め出す政策です。広大な植民地がある国(英仏など)、国土の広い国(米ソ)にとっては大変都合が良かったのですが、いずれにも当てはまらない日本やドイツ、イタリアは窮地に立たされました。これが第二次大戦の間接的な原因にもなりました。

 

 そこで国際社会は、二度と戦争を起こさないようにするために、ブロック経済を禁止するルールを作りました。これがGATT(貿易と関税に関する一般協定)です。GATTの原則は、自由、多角、無差別です。多角とは、多国間(=全加盟国)で問題を解決することです。

 

 GATTは53か国で始まり、やがてWTO(世界貿易機関)へと進化しました。現在は164か国・地域に広がっています。こうして世界経済は著しい成長を遂げました。

 

 しかし同時に問題も生じました。一つは、加盟国が増え過ぎてルールを作る話し合いが難しくなったこと、もう一つは、中国など、ルールを平気で破る国が現れたことです。WTOはやがて、形骸化するようになりました。

 

 そんな中、各国は少ない国同士で厳しいルールを設定するFTA自由貿易協定)を作るようになりました。FTAは話し合いが容易で、ルール違反に対しては厳しい罰則を科すことができます。しかも関税がほぼなくなるので、経済が活性化します。こうしてFTAは世界中に広がりました。日本も遅れてFTAを締結するようになりました。現在、これが人の移動等までを含むEPA経済連携協定)に拡大されています。

 

 TPPは、環太平洋地域におけるFTAです。もとはシンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4か国だけでしたが(域内GDPは全世界の0.8%)、ここにリーマンショックに苦しむ米国が割り込んできました。「このままでは人口が増え、成長著しいアジア経済から締め出されてしまう」との危機感があったからです。

 

 米国は日本にも参加を呼びかけました。日本としては、TPPに加盟しなければ、域内で日本の製品にだけ高い関税がかけられることになります。このことは、人口減少が確実な日本にとって致命的です。日本でTPP参加を本気で検討し始めたのは、民主党(現・民進党)の野田佳彦政権の時でした。

 

 実際にTPP参加を決めたのは安倍晋三政権です。それで民進党などの各野党が反対していますが、旧民主党勢力が反対するのは筋が合いません。

 

 また、TPPが締結されれば、鉄鋼ダンピング [2] や模造製品を作り続け、国営企業を庇護して国際ルールを無視し続ける中国に対する経済的包囲網となります。中国がTPPに入りたければ国内大改革をしなければなりません。それを行えば、共産党一党独裁体制は崩壊の危機に瀕する可能性も出てきます。

[2] 商品の価格を自国の市場価格よりも不当に低く設定して売ること。

 

 TPPは環太平洋圏における平和と繁栄の最大のツールです。ぜひともこれを推し進めるべきです。

 

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