脱北兵銃撃事件、北朝鮮の沈黙を警戒せよ


 北朝鮮兵士が11月13日、軍事境界線上の共同警備区域(JSA)板門店付近で亡命を図り、銃撃を受けて重症を負いました。兵士は韓国側で保護されていますが意識不明の重体です。

 

 この場所での脱北は極めて異例です。朝鮮戦争の休戦協定締結(1953年)以降、今回で3件目、前回(2007年)からは10年ぶりです。緊張感が高まっている時期だけに紛争の引き金になるとの心配もありましたが、今のところ有事(戦争)に至る雰囲気はありません。日本を含めた当時者国の本音としては、「とりあえず一安心」といったところでしょう。

 

 さて、北朝鮮からの脱北者はこれまでの累計で3万人を超えています。昨年1年間での韓国への脱北者は1417人でした。大半は中国との国境を越えますが、兵士が非武装地帯(DMZ)を歩いて渡るケースもあります。そして北朝鮮は軍の士気に関わる重大な問題と考え、非武装地帯であるにも関わらず大量の地雷を埋設しました。もちろん、明白な軍事協定違反です。

 

 そして2015年、この地雷に韓国軍兵士が接触し、一人が片足を切断、もう一人が両足を切断しました。韓国側は抗議しましたが、北朝鮮側も譲らず、北朝鮮軍は韓国に向けて砲撃を行いました。韓国軍がその砲撃地点をさらに砲撃するなど、一触即発の状況にまで至りました。しかし韓国の朴槿恵大統領(当時)は一貫して強気の姿勢を貫き、米韓軍の威力を見せつけ、最後には北朝鮮側の事実上の謝罪を引き出しました。金正恩委員長はさぞ悔しい思いを抱いたでしょう。

 

 金委員長がこの事件を機に、核ミサイル開発への思いを強めたのは間違いありません。核ミサイル開発は金日成主席以来の遺志ですが、こうした事情の積み重ねも大きかったと考えるべきです。

 

 今回の事件が有事につながることはなさそうです。しかしだからといって安心すべきことではありません。金委員長の臥薪嘗胆の思いに拍車をかけたのは間違いありません。何も起きないのは、裏を返せば彼らが時間稼ぎをしていることでもあります。日本は北朝鮮有事に対して、万全の体制を整えておくべきです。

 

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