安易な歩み寄りは北に猶予を与えるのみ


 アメリカのティラーソン国務長官が北朝鮮に対して、「前提条件なしで対話をする用意がある」と語りました。また、「トランプ米大統領も現実的な判断をしている」と強調しました。ワシントンで行われた講演会(12月12日)における発言です。

 

 混乱が内外に広がりましたが、翌日ホワイトハウスのサンダース報道官は、すぐさま発言の打ち消しに動きました。「トランプ大統領の北朝鮮への見方は変わっていない」との声明を発表したのです。今後の政権の動きを注視する必要があります。

 

 これまでアメリカは北朝鮮に対して、「核放棄への具体的な行動がなければ対話には応じない」という立場を一貫してとってきました(条件付の対話)。

 

 一方の北朝鮮は、アメリカに核保有国であることを認めさせることが最大の目的なので、無条件の対話を要求してきました。こうして両者の主張は平行線をたどり、その間に北朝鮮が核ミサイル開発を進めてきたわけです。

 

 このアメリカ側の方針はトランプ政権でも同じです。むしろトランプ氏は北朝鮮を政策転換に追い込むために、制裁を本格的に強化する厳しい戦略をとりました。ここに中国を巻き込むことにも一定程度成功し、制裁はかなりの効果を挙げていると見られます。

 

 日本海に北朝鮮籍の漁船が多数漂着しているのも、その証しの一つと言えるでしょう。

 

 来年には、北朝鮮国内で数百万人単位の餓死者が出るとの指摘もあります(韓国の趙明均統一相、10月30日)。北朝鮮がどこまで持ちこたえられるかが今後の情勢を占うことになるでしょう。

 

 ただしこの戦略にはリスクもあります。最終的に北朝鮮が暴発する可能性もあるからです。この場合の被害は計り知れません。北朝鮮には核兵器のみならず大量の生物化学兵器もあります。これが日韓に向けて発射されれば数百万人単位の犠牲者が出るとの試算もあります。米兵の被害もかなりの規模になるでしょう。世界経済に与えるダメージも深刻です。ティラーソン氏の発言は、こうした事態を懸念したものと考えられます。

 

 しかし北朝鮮問題では、こちらから歩み寄れば必ず騙されるというのが常でした。ですから彼の発言が、地域の平和と安定をもたらすとは必ずしも言えません。むしろ北朝鮮に猶予を与え、核ミサイルが完成してしまう可能性も十分にあります。そうすれば国際社会は急激に不安定化するでしょう。

 

 重要なのは国際社会の一致した取り組みと、平和のための毅然とした態度です。北朝鮮は単なる独裁国家ではありません。共産主義国家であることを十分に理解し、その脅威に強く立ち向かうべきです。

 

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