文氏支持者は「経済成長」最重視、当面はバランス外交か


 韓国で文在寅大統領が誕生しました。通常の就任は投開票から約2か月後ですが、朴槿恵前大統領が罷免されているため、投開票の翌日に就任式という異例の事態となりました。

 

 文氏はこれまで、北朝鮮への融和的姿勢、あるいは反日的な発言を繰り返してきました。北朝鮮に核ミサイル開発を放棄させるには、日米韓の結束、さらには中国をも巻き込んだ強力な制裁が必要です。文政権が日米とは歩調を合わせず、制裁の抜け穴となれば北朝鮮を利するのみです。文政権は一体、どのような外交・安全保障政策を採るのでしょうか。

 

 このことを理解するために、今回の選挙結果を分析してみましょう。

 

 まずは選挙結果です。文氏の得票率は41.08%、敗北した洪準杓氏は24.03%、安哲秀が21.41%でした。

 

 また、投開票1週間前に行われた朝鮮日報による世論調査では、文氏の支持層が重視した政策は、①経済成長(27.8%)、②雇用創出(21.6%)で、統一・外交・安保(9.1%)は5番目でした。これに対して洪氏の支持層では、①統一・外交・安保(45.1%)、②経済成長(29.0%)、安氏の支持層では①経済成長(35.6%)、②雇用創出(16.4%)、③統一・外交・安保(14.9%)となりました。

 

 また文氏の支持率は、経済不況の影響を強く受ける20~50代の層で高く、北朝鮮の脅威や安全保障に関心が高い60代以上の層では、2位の洪氏の半分程度でした。

 

 つまり文氏の主な支持層は、生活苦にあえぎ、未来を見通せない若者層、そして中年層だったのです。彼らは同時に、朴氏の有人の崔順実氏が莫大な利益を得たことに対して、極めて強い反発心を持っています。彼らの朴氏への反発、そして厳しい経済状況に対する批判が、選挙戦における文氏支持の原動力となったのです。

 

 一方、洪氏と安氏の主な支持層は、文氏の対北融和政策では北朝鮮の核開発の脅威が増してしまうという危機感を抱く保守の高齢層でした。洪氏と安氏の票を足すと文氏を上回りましたが、候補者の統一に失敗したこともあり、敗北しました。

 

 いずれにせよ文氏は、「韓国経済の復興」という難しい宿題を課されて出発しました。もし北朝鮮情勢が極度に不安定化したり、日米中との関係が極度に悪化すれば、経済成長はまず果たせません。おそらく文氏は当面は、北は刺激せず、米中双方に亀裂を作らないような、バランス外交を展開するのではないでしょうか。

 

 ただし利害の異なる国家の狭間でバランスをとることは容易ではありません。また経済成長に失敗すれば、支持を得るために極端な親北・反日政策を採るという可能性もあります。日本としては、文政権の動向を慎重に見極めつつ、対北包囲網を維持強化する方向に導くべきでしょう。

 

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