文在寅政権が東アジアの混乱要因に


 朴槿恵前大統領罷免を受けての選挙は文在寅氏の圧勝となった。勝因は、崔順実氏の国政介入問題に端を発した朴槿恵政権、保守勢力への厳しい批判「反文在寅」候補一本化ができなかったことである。

 

 「韓国リアルメーター」が5月1、2日実施した世論調査では、「何を基準に投票するのか」との質問で、「積弊の清算、改革の意志」が27.5%で、外交・安全保障より関心が高かった。

 

 この結果は、対北朝鮮認識をめぐる世代間ギャップが生み出したものだ。文氏を支持した若者層は、崔順実の国政介入事件で改めて明らかになった韓国社会の不平等是正が最大の問題と見たのだ。彼らは文氏が掲げる経済改革と「公共部門で81万人雇用」提言に飛びついた。  

 

 選挙戦において文氏は、南北対話を強調し「(金正恩委員長と)核問題解決のために会わなければならない」と述べている。そして金剛山観光の再開や開城公団の再開と拡大を強調した。さらに在韓米軍のTHAAD(高高度地域防衛ミサイルシステム)配備は、次の政権が決めるべきと明言し、著書には「米国にノーと言える外交が必要」とある。

 

 文氏は、李・朴政権に対し「安保も無能だった」と切り捨て、「廬武鉉政権では、南北間に軍事的衝突がたったの一度もなかった」と述べている。しかし、この認識は明らかに間違いだ。廬武鉉政権時代には、開城工業団地などを通じた経済協力の下、北朝鮮が核・ミサイル開発を続け、2006年には初の核実験を強行したのだ。廬武鉉政権時代の南北融和は、経済支援というカネで買った「かりそめの平和」に過ぎない。

 

 国際社会は今、国連安保理決議に基づいて北朝鮮の核・ミサイル開発資金を断とうとしている。朴槿恵前大統領が開城工業団地の操業を停止したのも、北朝鮮に外貨が流れて開発資金に使用されないようにするためだ。文氏の言う「再開と拡大」は、各国の努力を無にすることになる。 

 

 文氏は、「慰安婦合意」について日本政府に再交渉を求めている。もちろん安倍政権は応じない構えである。昨年締結されたGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の有効期間は一年間。片方の政府が終了の意志を表示しなければ毎年自動的に延長されるが、韓国内では延長への反対論は根強い。「効用を検討後、延長の可否を決定」するとしており、協定終了に含みを残す。

 

 与党は議会で過半数に届かない。混乱は必至だ。掲げた外交・安保の公約を無理やり通せば、日韓米の連携は完全に破たんする。それを望んでいるのは中国であり、北朝鮮であることを知るべきだ。日米の連携しかこの困難を越える方法がない

 

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