共同体実現と技術・経済の平準化


 去る1月17日、スイス東部ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、中国の習近平主席が基調講演を行い、米国新大統領トランプ氏が掲げる「米国第一主義」を、保護主義であると厳しく批判した。

 

 しかし彼に批判する資格があるだろうか。先ずは、中国が世界各国で行っている鉄鋼ダンピング輸出を止めてから言うべき言葉だろう。保護主義とは自国経済第一主義であって、中国こそ自国のために鉄鋼ダンピングを続けている、その元凶ではないか。

 

 一方、同じ17日、英国メイ首相はEU(欧州共同体)からの強行離脱を表明した。EUは、人・物・金の往来を域内で自由にする、言わば国境線を取り除く、人類初の試みとして期待され、また世界が目指すモデルと考えられていた。それが英国のEU離脱によって「頓挫」し、また一国主義に戻るのではないかと、大きな懸念を世界に与えることとなった。

 

 しかし考えてみよう。なぜ英国国民はEU離脱に賛成票を投じたのか。イギリスへは特にポーランド、ルーマニアから100万を超える移民が押し寄せて来ていた。彼らに職を奪われ、また彼らゆえに給料が安くなってしまったと、多くの英国国民が考えたゆえでの投票行動であった。

 

 前述したように、EU加盟国の中では、移住の自由が認められている。2015年度の一人当たり国民所得は、英国4万3800ドル、ポーランドは1万2500ドル、ルーマニアにいたっては8900ドルである。しかも英国は社会保障が充実している。当然所得が多く見込まれ、楽な生活ができるイギリスへ両国の人々は移住してくる。

 

 よく、EUはドイツの独り勝ちと言われる。ということは、技術の移転が充分進んでいないことを示唆している。人・物・金の国境線を撤廃するためには、その前に域内格差を縮めておかねばならない。すなわち経済と技術の平準化を進めておく必要がある。それを充分にしてこなかったつけが、英国のEU離脱につながったと見るのが妥当であろう。

 

 視点を変えれば、EU加盟国自体が一国中心主義を捨てていないからこういう結果になったとも言える。今後日本が共同体を創っていく上において、経済と技術を平準化しながら、その進展状況に合わせつつ国の壁を取り除いていくということを肝に命じておく必要がある。

 

国際勝共連合会長 太田洪量