「なぜ『よき関係』のあったことを語らないのか」との副題の付いた、『生活者の日本統治時代』(呉善花 著、2000年発行)。
今こそ、多くの日本人と韓国人に読まれるべき書籍である。
ここでは、本書の意義を端的に示している、あるインタビューの一部をご紹介したい。
当時、朝鮮の殖産銀行に勤めていた、朴承復さんのアンサーだ。
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――日本人と韓国人が仲よくしていくにはどんなことが大切でしょうか。
日韓親善の会合など、日本人と韓国人が集まったところでよく講演をすることがあります。
そのたびに私は「日韓仲よくしましょう」などとはけっして言いません。
それをわざわざ言うことは、恨みがあるということなんですよ。
そんな形式的で薄っぺらな姿勢からは、まったく嘘っぽい話しか出てきようがありません。
私はいつも、過去の政治的ないきさつや現在の政治的な判断抜きの、普通の一般的な話をしています。
それがほんとうの親善になるんだと信じています。
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朴さんが言う「普通の一般的な話」がいかなるものであるのか、容易に想像できない日本人と韓国人が多いのではないだろうか。
そのことが、15名の証言によって明らかにされているのが本書である。
“真実の歴史”を無視した、うわべだけの親善友好を叫ぶことは、空しいことである。
当時を生きた一般的な日本人と朝鮮人の、その思いを、戦後に生きる両国民が、いかに理解し、共有できるか、そのための先導役を目指したいものである。